アフターデジタルを読んで。

会社の先輩から、「最近1番刺さった本」と紹介してもらって読んでみました。

以下私の備忘録と感想です。

オフラインは存在しなくなる

現在デジタルシフトに取り組んでいる日本企業の多くが、オンラインを軸にしたオンライン活用だか、世界を見渡せば、オンラインとオフラインの主従が逆転し、オンラインが「主」で、オフラインは信頼獲得可能な顧客との接点という「従」になっているところも出てきている。

IoT、カメラ、センサーが当たり前に普及した世界では、あらゆるデータがオンラインデータ化し、オフラインはもう存在しなくなると言える。

その世界では、顧客接点データが膨大になる。

顧客接点データを多く持ち、そのデータを活用したよりよい顧客体験の施策を考え、実行し、分析する改善ループを高速で回せるかが、勝ち残る企業となる。

アフターデジタルとは

オフラインがデジタル世界に包括される世界のこと。これに対して、オフラインの世界が中心で、そこに付加価値的にデジタル領域が広がっているという世界がビフォアデジタル。

世界のデジタル事例

エストニアは世界で最も政府の電子化が進んでおり、電子移住権を発行し、、簡単に電子国民になれる。電子移住権を持てばエストニア国内での企業の手続きが簡易になり、永久に使えるビザが発行される。

スウェーデンはキャッシュレス決済は当たり前で、体内に小さいマイクロチップを注射で入れてデジタル決済を行なっている。

中国ではネット人口が8億人を超え、その97%がスマートフォンを保有し、都市部ではスマートフォン保有者の98%がモバイル決済を行なっているという調査結果がある。

タクシーの配車、食事や医療品の配達など全部アプリ上でオーダーから支払いまで完結するシステムが整っている。

韓国やアメリカでも4割以上の支払いがキャッシュレス決済。日本は2割程度。

中でも中国の進化のスピードは圧倒的。

政府の強力は後押しもあって、新たな社会インフラサービスを高速で生み出している。

キャッシュレス化が進むことで、購買者と購入履歴が紐付けられ、どの店でどの商品が何本売れたかというデータだけではなく、購入者がどういう趣向でどの店舗をよく利用し、どんな支払い方法をするのかまでデータになる。IoTセンサーが街中に設置されれば、行動もデータ化される。

このように次々とデータが生み出されることで、社会基盤そのものが再構築され、ビジネスモデルもルールも抜本的に変わっていく、つまり社会システムのアップデートが起こる。

モバイル決済は全ての購買をIDデータ化する

中国社会を大きく変えたモバイル決済。アリババの「アリペイ(Alipay)」とテンセントの「ウィチャットペイ(WeChat Pay)。

アリペイは中国モバイル決済の54%のシェアを占める。

ウィチャットペイは2018年3月時点で月間アクティブユーザー数10億人を達成している。

中国のキャッシュレス普及率は高く、路上生活でさえQRコードを掲げていたり、神社のお賽銭箱も賽銭箱ではなく、QRコードが貼られている。

この購買データをもとに企業は新たな策を立てて実行している

例)コーヒーのマイクロビジネス

注目すべきはとてつもなく浸透していることではなく、これによってあらゆる消費者の購買行動のデータが取れるようになったこと。

シェアリング自転車は生活拠点と移動をデータ化する

シェアリング自転車により、移動データが生まれた。

移動データの活用方法は2点。

①自治体による交通データとしての活用

例)スマートシティ。交通量の可視化、コントール。

②マーケティング活用

例)レストランやショッピングモールのレコンメンド、運動習慣やライフスタイルを知り、それに伴うレコメンド

シェアリング自転車サービスの提供企業は乱立したが、体験の磨き込み競争(いかにサービスを心地よく使ってもらえるか)で努力した企業が生き残った。

ビッグデータ活用事例

購買データ、行動データなど様々なデータがあつまり集まり、ビッグデータになりそのビックデータが独自サービスになる。

日本でもビッグデータのサービスはあるが中国はさらに上を行っており、社会システムに変化をもたらしている

例)アリペイのジーマクレジット

アリペイの利用履歴を中心に、提携サービスの利用状況やアリペイ状の友人も含めて膨大なデータを集め、それらをAIで分析さは、ユーザーの「信用スコア」を算出している。

この信用スコアは出身大学や職業を自分で登録することで点数をあげる事ができ、社会的な信用度を示すようにもなっている。

スコアが上がると、アリババグループや提携企業のサービスで特典が受けられる。海外渡航ビザや賃貸物件を借りやすくなる、個人融資が受けやすくなる、婚活でモテるなど様々なメリットが出ている。

例)ディディというタクシー配車アプリ

ディディのサービスは流しのタクシー、快速タクシー、プレミアムタクシー、ラグジュアリータクシーの4種類があり、快速タクシーとラグジュアリータクシーには9〜10倍の値段の違いがある。ドライバーの給料もグレードが上の方が高い。グレードの高いドライバーになるためには、評価システムで点数を上げ、受験資格を得る必要がある。この評価は3つのユーザー満足度のデータで取得している。

①配車リクエストに対する応答時間

②配車リクエストを受けた後のユーザーを待たせた時間

③安全運転をしているか(GPSとジャイロセンサー)

→評価をお金で買えないようにしている。

高いグレードのドライバーは個人融資を受けることさえできると言われている。

ディディはモバイルユーザーの約40パーセントではが使っているサービス(アメリカ人ののウーバー利用率は25%)

例)平安保険(ピンアン)グループの平安ドクターアプリ

平安保険グループは保険会社。

保険会社の弱点はユーザーから保険を契約してもらった後、ユーザーが怪我や病気になった時しか会う機会がない。契約は自動更新なので、接点もない。これを危機と捉え、デジタルサービスを使った生活圏へとビジネスを拡大した。

中でも成功したのが、医療系アプリの「平安グッドドクターアプリ」。2018年1月時点で1億9700万人の利用者を獲得している。中国の医療事情の問題を解決するサービスになっている。

中国の開業医はピンキリ。悪意の持った医者に当たると、いい加減な処方で、高額な医療費を請求されたり、生命の危機にさらされることもある。なので、総合病院にみんなが行く。総合病院で順番待ちの整理券を受け取るが、診察を受けるのに7日待ちになっていた。そこに、整理券を転売するダフ屋が横行し、1枚7万円で売られているという状態だった。

平安グッドドクターアプリは以下3つの機能を持つ。

①アプリ上で開業医に無料で問診できる

②診察の予約ができる

③歩数がポイントになる

平安グッドドクターアプリのマネタイズは2つ。

①広告

歩数のポイントをもらうためには、1日1回アプリを開く必要がある。

②営業ツール

保険のセールスで売れない時にアプリをダウンロードしてもらい、使ってもらい行動データを集める。行動データを把握した上で顧客に連絡をとり、信頼関係を築いて保険を購入してもらう。

アフターデジタル思考への視点転換

リアルな生活がオフライン側に移行してきている。

デジタルに拡張された世界がリアル。例)学校に友達がいないがオンライン上に友人がいる

例)メールを送った後に「今メールを送りました」と電話をする人をみて首をかしげる新入社員

例)仕事での付き合いしかなかった人とFacebookで繋がったら共通の趣味を持っていて親しくなった

アフターデジタルな世界のリアルチャネルの役割

カスタマーサクセス理論のハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという考え方と非常に親和性が高い。

リアルは体験価値の高い提供や信頼獲得ができる貴重な接点。

ハイタッチは人が個別対応する最も密な接点(訪問、会議、勉強会など個別対応ふる接点):人接点

ロータッチは人が複数人を相手にする接点(ワークショップ、イベントなど同時に複数対応する接点):人・場所接点

テックタッチは人数制限なく展開可能な人が介在する必要のない接点(オンラインサロンで介在する場合もある):デジタル接点

オンラインショップでもリアルに旗艦店を持って、体験と信頼獲得をしている。

OMO(Online Merges with Oflineとは)

アフターデジタル時代の成功企業が持つ思考。

インターネットをどう活用するかではなく、リアルな場所や行動も常時オンラインに接続をしている環境がが整っているので、オフラインが存在しない状態を前提として、ビジネスをどう展開していくかを考える必要がある。

OMOの発生条件 (by元GoogleチャイナCEO李・開復)

①スマートフォンおよびモバイルネットワークの普及。いつでももこでもデータを取得でき、偏在的な接続性をもたらす。

②モバイル決済浸透率の上昇。

③幅広い種類のセンサーが高品質で安価に手に入り、偏在する。リアルの世界の動作をリアルタイムでデジタル化し、活用が可能になる。

④自動化されたロボット、人口知能の普及。

オンライン企業のオフライン店舗の役割

オンラインやオフラインとチャネルを分けて考えていない。

オフライン店舗でも行動データが取得できる時代において、モバイルもPCもリアル店舗もユーザーインターフェースであると考える。

チャネル分けというのは企業目線であり、顧客はチャネルで考えておらずらその時最も便利な方法で買いたい。このニーズに合わせるためのオフライン店舗。

高頻度データでプロダクトと顧客体験(UX)を高速改善させなければ生き残れない

データでプロダクトと顧客体験(UXを改善する

日本企業は属性データをユーザーに回答させておきながら、アップセルやクロスセルにしか活用していない。中国企業は行動データをフル活用さは、ユーザーにプラットフォームに長く滞在してもらおうと全力で取り組んでいる。

データを売りや効率に使うなというわけではなく、ユーザーへの顧客体験を良くするために使う視点を最も大切にすべき。

ECサイトがなくなり、ニューリテールが出てくる

あえて「e=電子」をつける必要は無くなってくる。

アリババのネットスーパー「フーマー」

フーマーは利便性が高く、新鮮で豊富な食材を顧客に素早く届けられるのが特徴。

オンライン注文すると、フーマー店舗の3キロ圏内だと30分以内に配送してもらえる。

顧客メリットは「その時に一番便利な方法で購入できること」

仕事帰りに注文したら、帰宅したとほぼ同時に届く。

仕事帰りにフーマーに寄って買って帰る、持ち帰るのが嫌なら、配送してもらう

コンセプトは「食品ECの倉庫に顧客がウォークインできる」

倉庫兼、配送センター兼、スーパー兼、生鮮食品の実践販売の場兼、レストラン。

リテールテイメント(リテール(小売)エンターテイメント(娯楽)をかけた造語)を重視て作られた。

壁や天井にはオンライン注文用の専用バックが吊られたベルトコンベアーが動いている

店の中央に大きないけすを設置し、タラバガニやロブスターを生きたまま販売し、調理して提供。

調理の様子を見ることもできる。

生鮮食品でもオンライン注文で安心して注文できるようになる。

実店舗を訪れた人もオンラインユーザーもアプリ経由で注文から購入が完結します。

購買がアプリに集約されているので、購買データから個人に最適化したオススメクーポンが出る

集めた膨大データを統合し、店舗ごとに商品棚のラインナップや在庫を変えている。

在庫管理にはビックデータ活用をして、売れ残りはほとんど出ない。

生鮮野菜なら農家と情報共有し日々の収穫量や次に作付けする品目まで細かく調整している。

フーマーが新店舗を出したばかりの時はオンライン売り上げ8〜9割だが、しばらくすると店舗売り上げが4割程度まで上がる。

フーマーのメインターゲットは「25歳〜35歳の若くして結婚した女性で、価格よりも食材の鮮度や品質を優先する傾向のある消費者が集まるエリア。

スターバックスのゲームチェンジ

中国のコーヒー市場は元の市場規模が小さいこともあって、年25%以上で拡大している。

中国スターバックスは2018年になり、苦戦を強いられている。理由はフードデリバリーサービスが一気に広まっているため。

フードデリバリーアプリを入れていない人はいないとほど広まっており、もはや食事のインフラ。

スターバックスはサードプレイスというポジショニング、コーヒーが冷める、氷が溶ける、泡がなくなるということで、デリバリーを行なっていなかったが、ドライバーのネットワークが充実しコーヒーもデリバリーサービスを行う店が出てきたこと、スタバは利用客を奪われた。

そこで中国スターバックスはアリババと提携し下記2つを実施。

1)ウーラマのドライバーからスタバ専用のドライバーを確保

2)フーマーからスタバを頼めるようにした

この2つがうまく行くか、まだ結果は出ていない。

日本企業にありがちな思考の悪例

効率とテクノロジー中心の無人化

日本の無人コンビニは「人件費削減」「効率化」に目が行きがちだが、中国の無人コンビニ企業(Jian24)はリアル店舗での購買行動のデータ化を目的としており、そのデータを使ったコンサルティングビジネスを展開しようとしている。

オンライン上では、閲覧した商品ページ、クリックしたバナーなどのデータが取れるが、リアル店舗では取れない。オフラインがなくなった世界に備えて、オフラインでも行動データを取れるようにしている。

オンラインを活用するという考え方

×一部の店舗で試験的に取り入れて行きたい

→行動データを顧客ごとに繋げてかつようできるかがポイント。全ての会員データと全ての店舗の在庫データ、他店舗との連携など、全てデジタルデータとして扱えるようになって初めて意味がある。

×オインラインで顧客データをたくさん持っている

→属性データを保有していても意味がない。行動データを含めて、購買習慣を全面的にデータ収集できるかどうかが重要。

プロダクト中心に据えるという考え方

アフターデジタルでは、いかにデジタルで接点を取るかという顧客志向の視点が必要。

×チラシ広告をそのままウェブにする

→リアルでは、面積や距離という物理的制約が存在するため、物理的制約を前提にして店舗オペレーションを組み、その上で顧客の行動をデザインする。

デジタルの世界では物理的制約から解放されて、理想の行動を創ることがより簡単に実現できる。この二つの世界を行き来させようとしていたのが、「O2O」(online to offline)の時代だった。

リアルもデジタルも融合したOMOにおいては、オフライン側でも理想行動に近づけるという思考法で設計することになる。

この記事を書いた人

東証一部上場企業のコンサルティング会社に勤務する3児の母(7歳と4歳の娘2人と0歳の息子1人:2022年6月現在)。仕事と家事と育児をどう心地よくするかを追求するのが好き。仕事は趣味の一つと捉え、他にも健康・資産運用・ボディメイク・旅行が趣味。

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